俺の絶望について記述する。つまりいまこの瞬間のすべてについて記述する。一時間後には忘れているのかもしれない、個人的一世のなかの一瞬について記述する。
うず高く積み上がるその感情に対して、俺はいまだ新鮮に、飽きもせず、朝が巡ってくるほどの調子で出会い直せる。寄る年波にも動じない、尽きせぬ出会いの水源に、俺は感謝の必要まで感じている。
LINEとDMの未読既読の山は積み上がる。仕事の連絡さえ滞っているのに私用の連絡を返せるわけもない。同じように部屋のなかの本や物も積み上がる。NintendoSwitchを引っ張り出すのさえ骨が折れるので、ゲームで気力を充填させることもままならない。俺の居城は俺自身によって脅かされる。俺はそれを黙ってただ見ている。
椎間板のリハビリに十年来通う整形外科は、近ごろ予約がパンクしていて、50分ほど待っても呼ばれないことが増えている。若者は暇ではないから、失望して帰る。予約の時間に合わせるために急いで出た、という気持ちが出ると癪なので、俺は家で急ぐことをやめて堂々と予約の時間を破るようになる。約束の破り合いはそうして絶えない。
人からスーツが似合うと言われる。偉丈夫とはいかずとも、ある程度までは自分の外貌について承知している。それを維持するために、今後にわたって必要な幾多の動作を、怠らない自信はない。経年劣化を経年進化と呼び直せるような強靭な心は、禍々しい渦のなかに置き忘れられている。
未来は覆い尽くされる。黒黒と、寒々しく。
新たな本作りなどに手を出すなと、未来の俺に対し、いまの俺はこいねがう。儲かりもしない本を作るのはおもえらく女遊びにでも似ている。ひとときのドーパミンのためになけなしの金と勇気と若さをベットする。それ以外の全部がめちゃくちゃで、羽虫のはばたきは止まないとしても、全部がめちゃくちゃであることをその瞬間だけは忘れられる。
こう分析できるだけの明瞭な賢明さを、俺はどこかでまた失い、すべてが終わったあとでまた、あらゆる過去と現在を呪うだろう。その繰り返しに終止符を打てる未来に縋り、俺はまた無理やり家の外へと一歩を踏み出している。


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